ぎぶいちブログ

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【書評】『つながりの創り方』|失敗しないサブスクビジネス

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  • サブスクという言葉もかなり市民権を得た昨今ですが、その課金モデルに飛びついて、多くのサブスクビジネスが隆盛しては廃れていっている。

ユーザー視点でみれば、空白の30年と言われるほど賃金水準の低迷、さらには物価上昇もあり、お財布のヒモはきつくなる傾向。

そのような中でもNetflixやAmazonプライム、Spotifyといった一部のサブスクサービスは多くのユーザーから支持されています。

これからはどんなビジネスモデルがヒットするのか?サブスクビジネスは成功できるのか?
といった悩みを持つマーケティング担当、新規事業開発部門の方は必見の本となっています。

これからのビジネスモデルにおいて成功の重要な要素となるユーザーとの「つながり方」を教えてくれるのが
『つながりの創り方』 川上昌直 著

自分が新規事業開発の部門に配属になった時に読んだのがこの本でした。

この本では、リカーリングモデルとして、サブスクも含めたさまざまなビジネスモデルの形態をわかりやすく解説しています。
どのような特徴があって、何を軸にビジネスモデルを考えるべきかが非常に参考になる内容となっています。

この記事では、自分が既存事業をリカーリングモデル化(たとえばサブスク)するにあたって特に参考にすべきと思った点に絞ってご紹介します。

『こんな方におすすめ』

目次

本の概要

課金方法だけを変えたリカーリング的、サブスク的ビジネスは失敗する。
これは収益の取り方を変えただけで、ビジネスモデルを変えたわけではない。
これからの企業はユーザーにいかに寄り添っているかどうかが重要であり、
あらかじめユーザーのアクションを察知して動けてるようなつながりの重要が書かれている。

ビジネスモデルを変える2つの方向性を提示しており

ひとつは、マネタイズを変えるだけでなく、ユーザーへの価値提案を「プロダクト」から「つながり」へと変える

もうひとつは、売り切りモデルのまま「つながり」を強化することで、ビジネスモデルを生まれ変わらせる

本書では、このつながりをどのように捉え、どのように創っていくかをわかりやすく解説してくれている。

リカーリングモデルの全体像

リカーリングモデルとは、継続的に収益を得ることを目的としたビジネスモデルを指します。 「リカーリング(Recurring)」という言葉は、「繰り返す」や「循環する」といった意味を持ち、 商品やサービスを売り切って終わりではなく、継続的に価値を提供することで、その対価として長期的な収益を目指す考え方です。

リカーリングモデルという言葉自体は収益化(マネタイズ)の仕組みを表しているが、リカーリングモデルを採用する企業においては、途中解約や離反が命取りとなります。

リカーリングモデルそれぞれの特徴

本書では継続の拘束力を縦軸、利益回収の時間を横軸として、ビジネスモデルをプロットすることで整理して説明してくれている。
ちょうど真ん中の線上に位置するビジネスモデルはユーザーにとっても企業にとってもバランスのとれたビジネスモデルとなり、リカーリングバランスが取れていると本書では表現されている。
この位置から継続の拘束力が低くなるとユーザー有利となり、一方で継続の拘束力が強くなると企業側が有利になる。

ここからは具体的にビジネスモデルの種類を紹介します。

リカーリングバランスのとれたビジネスモデル

■リピーター
売り切り型のビジネス。ユーザーは1回の支払い商品やサービスを購入し利用する。企業としてはその時点で利益を回収可能となり、最も利益回収の時間が短い。過去は売り切り型ではユーザーとの関係性が保ちづらいと言われていたが、最近ではロイヤルカスタマー化したり、ECサイトなどのオムニチャネル化によってユーザーとの関係性を保つこともできるようになってきている。

■レーザーブレイド
本体を保有してもらい、付属品を継続購入してももらいながら利益を得る収益モデル。インストールベースビジネスなどと呼ばれることもある。
代表的な例としては、ウォーターサーバーと水、プリンターとトナー、ゲーム機のハードとソフトウェア。
リピーターよりも利益回収の時間は長くなるが、本体を購入した企業の消耗品や付属品を使わせる継続の拘束力があるのが特徴。消耗品を継続してつかってもらえるかが重要。

■リース
ある資産を対象として、ユーザーは所有権を持たずに、サービス提供企業に利用対価を支払うビジネスモデル。ユーザーは途中で利用を止めることはできない。リースの特徴は、継続に対する拘束力が契約上も法的にも守られていること。企業にとっては、大きな安心材料になるが、ユーザーにとっては途中解約できない点は利便性は妨げられている。

リカーリングバランス外のビジネスモデル

■フリーミアム
これは「フリー(無料)と「プレミアム(割増)」の二つの特徴を併せ持ってビジネスモデルに対する造語。フリーミアムとレーザーブレイドの違いは、ベースとなるプロダクトが有料か無料かの違いとなる。またユーザーが自発的に購入するという点ではフリーミアムとリピーター(売り切り型)には共通点がある。
フリーミアムはベースのプロダクトを提供しても全く利益にならないため、ユーザーにとっては負担が少なう、リピーターよりもユーザー有利になる。

■サブスクリプション
サブスクリプションとリースは、所有権がユーザーに移転しない点やユーザーが定期的に利用対価を支払う点では酷似している。大きく違う点は、ユーザーに対する継続の拘束力であり、リースは決められた資産について分割購入するため、ユーザーは途中解約は不可。一方、サブスクは途中解約が可能となる。
サブスクはレーザーブレイドとも共通点があり、レーザーブレイドはベースのプロダクトを「購入」する点、サブスクは「利用登録」をする点で、両者とも中途解約に対する心理的なハードルは少なからず発生する。利益回収の時間では、レーザーブレイドが利幅の大きい付属品で、できるだけ短期的に回収しようとするのに対し、サブスクは一定金額で薄く長く利益を回収しようする点で違いがある。
つまりサブスクの方がレーザーブレイドよりもユーザーにとって有利になる。

■先取り型サブスクリプション
最初は月額課金としながら、認知度があがったら年間定額料金に切り替えるビジネスモデル。月額課金があることでユーザーの心理的ハードルを下げる効果があり。

■定期券型サブスクリプション
売り切りのプロダクトとほぼ同じまま、一定期間利用してもらうことを条件に、1回あたりの利用料を割安にするビジネスモデル。代表例としては電車の定期券やテーマパークの年間パスなどが該当する。同じサービスの課金単位を1回ごとではなく、期間に変更したもの。1回当たりの対価よりも高い価格で、しかも前払いで受けるため、利益回収の時間は圧倒的に短くなるため企業有利なビジネスモデル。

■パートワーク
ディアゴスティーニ社が提供する分冊百科と呼ばれるビジネスモデル。パーツごとに販売されるが、すべてを収集すれば最終的に1つの完成形を得られるプロダクト。ユーザーは嫌ならいつでもやめられるので、極めてユーザー有利なリカーリングモデル。

利益回収シナリオの重要性

企業の目的は、ユーザーに価値を提供し満足させ続けて社会を良くしていくことと捉えると、利益は、ユーザーを喜ばせ続けるために必要な「原資」となる。

ユーザーの生活をアップデートし続けるために、企業が計上しなければならない「必要利益」という考え方が重要。

必要利益の回収方法としては「課金の強弱」と「課金の回数」という考えがある。

課金の強弱は、たとえば、プリンタでは本体の利益率よりも付属品の利益率のほうが高めに設定されています。利益率の異なるプロダクトを組み合わて、ユーザーが自発的に利益率の高いプロダクトを購入するような仕掛けを用意する。
メインプロダクトで儲けないという考え方を極端に実行しているのがコストコです。コストコは原価率が90%前後の粗利率10%前後という破格の薄利ビジネスをしています。これは流通業なのに「販売」では利益を期待しないと決めて、年会費で必要利益を儲けるビジネスモデルとしています。

課金の回数の観点では、サブスクやリースはユーザーに支払ってもらう課金回数が、必要利益の回収にとって重要となります。両者の違いは、支払い回数への拘束力、つまり「継続の拘束力」となります。


サブスクリプションは定額料金で時間をかけて、課金回数を蓄積しなければ必要利益が回収できないビジネスモデルにもかかわらず、ユーザーはいつでも解約できます。つまり必要利益の回収は、契約時には全く確定していないことになります。

サブスクを代表とするリカーリングモデルは「所有」ではなく「利用」という社会の流れを象徴する収益化モデルになりますが、契約で縛るのではなく、いかにユーザーに満足し続けてもらえるのか、いかにユーザーが自発的に利用したくなるようにするのかが最も重要なポイント。

  • ユーザーとのつながりの創り方

リカーリングモデルは、ユーザーとの強い「つながり」を継続的に収益化する仕組みと捉えることができ、つながり強い企業はユーザーに提供する価値は「プロダクト」ではなく生活の「アップデート」と考えている。
これは「ドリルじゃなくて穴を売れ」と同じ考えとなる。
また、ユーザーを分析する視点は「顕在ニーズ」ではなく「ジョブ(片付けるべき用事)」で考え、ユーザーの活動を軸につながりを構築している。


つながりを強化するためにはユーザーの活動を購入以前のフェーズからアップデートフェーズ、アップグレードフェーズも含めた一覧の体験として捉えることが重要。

ユーザーがどのような活動をしているかをリアルに想像し、ユーザー視点でタッチポイントを設定する。ユーザーとのタッチポイントはすべて手を抜いてはいけない。ユーザーは一番優れたタッチポイントでではなく、一番劣ったタッチポイントで企業を評価する。

売り切り(リピーター)から脱するには、より積極的に購入以降のプロセスにタッチポイントを広げていくことが重要。

このタッチポイントを価値ある資産として課金ポイントとできるかが肝となる。企業の姿勢次第でタッチポイントはただの消費にもなるし資産にもなる。

『つながりの創り方』のまとめ

サブスクというビジネスをリカーリングバランスという概念を使ってほかのビジネスモデルと整理する形で分かりやすく学べる内容。

ただし課金方法を変えるだけでは成功することは難しく、途中解約が可能なユーザー有利なサブスクでは、いかにユーザーとのタッチポイントのなかでいかに価値あるつながりを継続して創れるかがカギとなる。

便利なものがあふれ、ある程度の問題は解決されている世の中で、ユーザーが本当に片付けたいジョブを洞察し、モノ売りではなく体験としての「コト売り」をできるかが企業として、マーケッターとして重要。

ぜひ『つながりの創り方」を一読いただき、ご自身のビジネスモデルを考える力を向上させてみただください。